平尾夫婦坂児童公園
アップデート:2025/10/16
平尾の山あいに、ぽつりと現れる夫婦坂児童公園は、遊具も看板も目立たず、ただ静かに風景と共にそこにある。人工の賑やかさを拒むように、ただ山のかたちをそのまま残している。美しい傾斜が折り重なり、木漏れ日がゆるやかに地面を撫でてゆく。斜面のあちこちに無造作に置かれたベンチは、まるで誰かの密やかな読書の記憶を待っているかのように、高さも角度も少しずつ違っていて、見る人によって景色も変わる。
登る者は登る者なりの、佇む者には佇む者なりの時間が流れ、下界の喧騒がすっかり遠のく。夫婦坂という名のとおり、この地の起伏にはなにやら語られぬ物語がひそんでいるようでもあり、その沈黙が、かえって公園に不思議な親密さを与えている。木々のさざめきに耳を傾けながら、ひととき、山と語らうための場所なのだ。








