多摩川緑地公園
アップデート:2025/08/24

多摩川緑地公園は、果てしなく続く空の下に広がる河川敷の大舞台だ。草の匂いと風の音が絶え間なく混じり合い、どこか時間の感覚を溶かしてしまう。そこには幾つもの野球グラウンドが横たわり、白球を追う声が響き渡っている。汗と土埃にまみれたその風景は、青春そのものを凝縮した幻影のようだ。
そして不意に現れるのが、ちょっと凝った意匠を纏ったトイレである。河川敷に不釣り合いなほど堂々と構え、まるでこの地の番人のように旅人を迎え入れる。芝生に腰を下ろせば、川面を渡る風が頬を撫で、遠くの街並みさえ蜃気楼のように霞んでゆく。ここはただの公園ではない。多摩川の流れとともに心の奥に眠る冒険心を呼び覚ます、ひとつの物語の入口である。




