多摩川遊園
玉堤
アップデート:2025/11/04

多摩川遊園は、まるで空と地面の境界がゆるんでしまったような、ひたすらに広い公園である。川の流れは穏やかで、風はどこからともなくやってきて、またどこかへ消えていく。ベンチに腰を下ろすと、目の前に広がる空間の大きさに、ふと心細くなる。
ここでは人も建物も小さく見え、音さえ遠ざかっていく。だがその静けさの中に、都市のざわめきから切り離された自由が息づいている。何もないことが、この公園の最大の魅力だ。草原の向こうに光が揺れ、風がページをめくるように時間を運んでいく。
広さの中で、自分という一点がかすかに浮かび上がる。多摩川遊園は、そんなふうにして、ただ「いる」ことの贅沢を思い出させてくれる場所である。



