大京町という名は、かつての大番町と右京町が寄り添い、互いの一文字を分け合って生まれたという。まるで長い物語の途中で、二つの章が自然に溶け合い、新しい頁がめくれたような由来である。その静かな歴史の気配は、町を歩いているとふとした角や建物の影にふわりと漂い、過ぎ去った時間がそっと息づいていることを感じさせる。
町並みは、華やかな新宿のすぐ近くとは思えないほど穏やかで、どこか柔らかな品をまとっている。古い建物と新しい暮らしが重なり合い、通りを吹き抜ける風がその境界を優しく撫でていく。歩道を行き交う人々も、都会の速さから半歩だけ遅れた時間をまとい、町全体に心地よい余白を生み出している。
散策していると、かつて別々だった町の名残が、ひっそりとした佇まいの中に点々と残っているように思える。それらを見つけるたび、大京町の静かな誕生の物語を自分だけの手でなぞっている気分になる。
大京町は、華やぎのすぐ隣で歴史の余韻を味わえる、小さな散歩の宝箱のような町である。
大京町・町名の遍歴・由来
1943年(昭和18年)に大番町と右京町が合併してできた町で、町名は旧町名のそれぞれ一文字とってつけられたものである。
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大京町 - Wikipedia)