新宿区公園探訪
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市谷八幡町という名を耳にすると、都会の真ん中にそっと置かれた小さな結界のような静けさが思い浮かぶ。外堀通りを抜けて足を踏み入れると、町はゆるやかな起伏をまとい、日常の速度がふっと緩む。坂の上り下りは穏やかでありながら、心の奥底に眠っていた旅情をそっと呼び覚まし、歩くたびに景色が微妙に姿を変える。古い石垣や欄干の影には、長く積み重なった時間の匂いが宿り、通り過ぎる風がそれを静かに撫でていく。
町を見守るように佇む八幡神社の杜は、濃い緑をとどめ、周囲の喧騒とは別の呼吸をしている。鳥居をくぐらずとも、その存在は町の輪郭を柔らかく整え、訪れる者にひそやかな安心を与える。住宅街の路地には植木鉢が並び、窓辺から漏れる生活の明かりが、どこか遠くの旅宿のようなあたたかさを運んでくる。
夕暮れが近づくと、坂の影は長く伸び、町全体が淡い橙色に染まる。その光の中で市谷八幡町は、都市の片隅に潜む物語の入口のような表情を見せる。気づけばまた訪れたくなる、不思議な磁場を秘めた町である。