新宿区公園探訪

市谷仲之町

市谷仲之町は、まるで街の奥座敷に隠された小さな秘密の間のようである。外苑東通りのざわめきが一歩ごとに薄れ、道はゆるやかに曲がりながら、どこか不思議な静けさを湛えた住宅街へと誘う。その静謐は、都会のど真ん中にあるとは思えぬほど澄んでいて、心の表面に積もった細かな埃をそっと払ってくれる。

古い塀と新しい建物が交互に連なり、時代の層がそのまま路地に刻まれている。季節ごとに表情を変える庭木の影が舗道へ柔らかく落ち、散歩者の背中を優しく包み込む。どこからともなく、夕餉の支度を知らせる匂いが漂い、旅人の歩みをふと緩めてしまう。

少し歩けば曙橋の活気が届き、また少し戻れば、市谷の穏やかな丘の気配が寄り添う。二つの気風が交わる狭間に守られるようにして、市谷仲之町は今日も静かに息づいている。何もないようで、なぜか胸の奥でそっと灯りがともる、不思議な吸引力をもつ小さな町である。ここを歩くと、自分の輪郭までも柔らかくなるような心地がする。

市谷仲之町の場所

市谷仲之町・町名の遍歴・由来

市谷本村町にあった尾張徳川家の上屋敷と河田町にあった屋敷のおおよそ中間に位置していたことから、付近を「仲ノ町」と呼ばれていたのが、そのまま地名になったといわれている。 (市谷仲之町 - Wikipedia)

市谷仲之町の公園

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