新宿区上落合は、まるで街そのものが丘の上で深呼吸しているような、静かなふくらみをもった土地である。細い坂道がゆるやかに折れ重なり、家々の屋根が不規則なリズムで連なってゆく様子は、どこか懐かしい風景画の一枚を歩いているような気分にさせる。高低差が多いせいか、同じ道を歩いても時間帯ごとに景色の表情が変わり、訪れるたびに新しい発見がひそんでいる。
上落合の魅力は、その“間”に宿っている。商店街のにぎわいと住宅街の静けさ、そのどちらにも偏らず、ほどよい距離感で共存しているため、歩く者の心も自然と整ってゆく。路地裏には古い塀や樹木がひっそりと佇み、ふとした瞬間に昭和の香りを漂わせる。
夕暮れどき、坂の上から眺める街並みは特に美しい。橙色の光が屋根瓦に反射し、落合という名の通り、さまざまな時代や物語がここで静かに寄り添っていることを感じさせる。気ままに散策するだけで、自分の中の忘れかけていた好奇心がそっと目を覚ます──そんな不思議な引力を秘めた町である。
上落合の場所
上落合・町名の遍歴・由来
新宿区の北西部に位置する。町域北部は妙正寺川に接しこれを境に、新宿区中落合に接している。北東部は新宿区下落合にも接している。東部は、神田川に接しこれを境に、新宿区高田馬場に接する。南部は、早稲田通りに接し、これを境に中野区東中野に接する。西部は、中野区上高田に接する。二丁目と三丁目の境を山手通りが縦断している。町域内は主に住宅地として利用される。
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上落合 (新宿区) - Wikipedia)