河田町に足を踏み入れると、都市の喧騒がすっと薄れ、どこか懐かしい余白が胸の内に広がる。高層の建物が立ち並びながらも、町全体には不思議な静けさが宿り、風の通り道がひそやかに形を変えながら流れている。かつて放送局がそびえていた名残りを思わせる空の広さは、今もなお人の想像を軽やかに刺激し、歩く者に小さな物語の断片を運んでくる。
河田町を歩けば、坂の起伏がささやかなリズムとなり、気づけば旅の途中にいるような心地が生まれる。大学のキャンパスの緑がふと姿を見せるたび、日々の時間がゆっくりとほどけていき、視界の端に漂う静かな明るさが、不思議と歩みを軽くする。古い街路と新しい建物が混ざり合う様子は、まるで時の層が重なり合った一冊の本のようで、どこをめくっても続きが気になってしまう。
夕暮れが訪れると、街路の影が長く伸び、町の輪郭がやわらかく滲む。その瞬間、河田町は都会の中心でありながら、どこか隠れ家めいた魅力を放ち始める。歩くほどに気持ちが澄み、また明日も訪れたくなるような、不思議な引力を秘めた町である。
河田町・町名の遍歴・由来
旧牛込区にあたる牛込地域内にあたる。東京女子医科大学および付属研究機関が町域の大部分を占める。同大学と隣接してかつてはフジテレビジョンの本社(1962年に千代田区有楽町より移転。建物自体は開局した1959年に竣工)があり、同局の所在地として全国的にもよく知られ、「河田町」はフジテレビの通称としても用いられた。フジテレビの所在地として長らく知られていたが、フジテレビが本社を置くまでは日本教育テレビ(現・テレビ朝日)が本社屋の候補地の一つとしてあげていたこともあった。
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河田町 - Wikipedia)