新宿区公園探訪

喜久井町

喜久井町は、早稲田の学びの気配と、古い町の静けさがゆるやかに混じりあう、不思議な温度をもった場所である。大通りから一筋入るだけで、風景はしんと落ち着き、細い路地が行き先をぼかしながら続いている。漂うのは、昔から住む人々の息づかいと、どこか文学の余韻のようなものだ。歩くうちに、時間の流れがゆっくりと軟化してゆくのを感じる。

町には、わずかに残る古い家並みが低く佇み、季節の花がささやかに色を添える。午後の光に照らされた石畳には、学生の影が伸び、夕暮れになると静謐がさらに深まり、世界の輪郭が柔らかくほどけてゆく。ふとした曲がり角の先に、まだ見ぬ景色が控えているようで、歩みを止めることが惜しくなる。

喜久井町を歩くと、忘れていた勘がふっと戻ってくる。自分がどこから来て、どこへ向かうのかという問いを、町が優しくたたみかけてくる。控えめでありながら、心を掴んで離さない魅力がここにはある。気づけば、また訪れたくなるのである。

喜久井町の場所

喜久井町・町名の遍歴・由来

地名は、当地の江戸時代から続いた町方名主・夏目家の家紋「井桁に菊」にちなみ、文豪夏目漱石の父の夏目直克が命名した(漱石も喜久井町の生まれ、出生時の地名は牛込馬場下横町)。 (喜久井町 - Wikipedia)

喜久井町の公園

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