北新宿という地名には、不思議な期待感がある。新宿の喧騒のすぐ隣にありながら、ひとつ北へ踏み込むだけで空気がやわらぎ、街並みの表情がふっと落ち着きを取り戻す。巨大都市の縁にそっと生まれた余白のような場所で、歩くほどに微妙な陰影が浮かび上がってくる。
路地を抜ければ、古い住宅と新しい建物が肩を寄せ合い、時間が積み重なる音を静かに奏でている。通りかかった小さな公園の樹々が風に揺れ、その向こうからは新宿の高層ビル群がちらりと覗く。都会そのものの景色と、暮らしの匂いが妙に仲良く並ぶ光景に、思わず足を止めてしまう。
北新宿は、華やかな街の影で控えめに輝く場所だ。散歩すればするほど、地図には載らない温度や手触りが見えてくる。新宿の喧噪に疲れたら、ほんの少し北へ――そんなささやかな冒険を誘う町である。
北新宿・町名の遍歴・由来
かつての柏木二~四丁目の全部と五丁目の一部にあたる。古くからの住宅地や中小の商店街が数多く密集していたが、西新宿八丁目・北新宿一・二丁目における税務署通り(東京都道・埼玉県道4号東京所沢線)の整備と北新宿地区再開発事業により、2011年5月に高層ビルである新宿フロントタワーが完成した。(
北新宿 - Wikipedia)