納戸町は、名前を聞いただけで胸の奥に小さな引き出しが開くような、不思議に懐かしい響きをもつ町である。納戸とは、暮らしの奥に潜む静謐の場所。その名を冠した町には、やはりどこか日常の陰影をそっと抱きとめる風情が漂っている。大きな道から一歩入れば、急に世界の音量が下がり、家々のあいだを縫うような細道が、自らの影さえ頼りに歩きたくなる独特の静けさを湛えている。
路地の曲がり角には、古い石垣や磨り減った階段がさりげなく佇み、まるで町そのものが長い記憶を秘めた納戸のように、訪れた者に小さな発見を差し出してくる。朝には風が木の葉を揺らし、夕刻には家々の窓から灯りが漏れ、生活の温度が町の輪郭をやわらかく包み込む。
急ぐ必要のない町である。歩けば歩くほど、ひそやかな魅力が積み重なり、気づけば自分自身も町の“引き出し”のひとつに収められたような気持ちになる。都会の中心にありながら、落ち着きと発見が同居するこの納戸町は、そっと心に小さな扉を開いてくれる場所だ。
納戸町・町名の遍歴・由来
町域内を牛込中央通りが通っている。主として住宅地として利用され、マンションなども多い。町域南部では、大日本印刷の関連施設も見られる。
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納戸町 - Wikipedia)