新宿区水道町は、かつて神田上水が静かに流れていた名残をそっと抱きしめている町である。上水の気配は今や姿を潜めたものの、町を歩けば、その見えない水脈が地中深くでひそやかに息づき、路地の隅々にまで澄みわたる涼しさをもたらしているように思える。1911年、牛込水道町から水道町へと名を改めたこの場所は、長い時間の流れを静かに沈殿させつつも、どこか軽やかな印象を保っている。
道は細く、建物は肩を寄せ合い、時折吹き抜ける風が昔日の気配をさらりと運んでゆく。ふと立ち止まれば、名前に宿る“水”の響きが、町全体に緩やかな透明感を与えていることに気づかされる。急ぎ足の都会の中にありながら、ここだけは時間が少しゆっくり流れているかのようだ。
散策する者にとって、水道町は静かな宝箱のような土地である。過去が重すぎず、未来が遠すぎず、ちょうどよい温度で心に寄り添う。歩けば歩くほど、古い名残が足元でそっときらめき、訪れる者をやさしく誘い込む。
水道町の場所
水道町・町名の遍歴・由来
町名は神田上水に沿った地であったことによる。1911年、牛込水道町から水道町に改称した。
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水道町 (新宿区) - Wikipedia)