新宿区富久町を歩くと、都会のただ中に、思いがけず柔らかな風が吹き抜けていることに気づく。高層ビルの谷間にありながら、この町には不思議と人の気配がゆるやかに溶け込み、忙しない時間の流れがふと緩む瞬間が散りばめられている。路地を曲がるたび、光と影が伸び縮みし、まるで町そのものが気まぐれな舞を踊っているようだ。
整然と整えられた新しい街並みと、昔ながらの静けさを湛えた住宅街が入り混じる富久町では、遠くで響く車の音さえ、どこか背景音として心地よく馴染んでいく。小さな公園のベンチに腰を下ろせば、空が思いのほか広いことに驚かされ、風に揺れる木々の気配が、都市であることを忘れさせてくれる。
この町には、派手さも喧騒も必要ない。日常の隙間にそっと息づく静かな歓びが、訪れた者の心をやさしく掬いあげる。ふらりと歩けば、知らずうちに胸の奥がほどけていくような、不思議な魅力を秘めた町である。
富久町・町名の遍歴・由来
町域内は主に住宅地として利用される。富久町の一部はバブル時代に地上げ屋に遭って多くの家屋が立ち退き、虫食い状態になってしまった。この場所は都市再開発が進み、2002年には超高層マンション(ローレルコート新宿タワー)が地上げ跡地に建った。また西部の西富久地区では、早稲田大学の協力の元、再開発が行われ、富久クロスが完成した。
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富久町 - Wikipedia)