新宿区若葉は、都心の只中にありながら、胸の奥にふっと緑の気配を灯す不思議な町である。通りを歩けば、古い邸宅の名残を抱いた塀が静かに続き、石畳を踏むたびに自分がいつの時代にいるのか一瞬わからなくなる。名に「若葉」を冠するだけあって、町にはどこか初々しい息吹が流れ、木々の影が道に柔らかな模様を描き出している。
細い路地を進むと、都会のざわめきが遠のき、代わりに人々の暮らしの匂いが漂ってくる。郵便受けに差し込まれた封書や、玄関先で伸びをする植木鉢が、町の静かな時間をさりげなく物語っている。曲がり角ごとに、ひっそりと佇む神社や古書の香りを漂わせる建物が姿を見せ、歩く者の心をつい探検家にしてしまう。
若葉は、急ぎ足の都会にそっとブレーキをかけてくれる場所だ。何気ない坂道を上れば、空が広がり、足元に穏やかな影が落ちる。その一歩一歩が物語の序章となり、知らぬ間に町と自分の間に糸のような縁が結ばれていく。気づけばまた訪れたくなる、そんな魅力がここには満ちている。
若葉・町名の遍歴・由来
新宿方面から走ってくる中央線と首都高速道路は、若葉1丁目の南端の崖から若葉1丁目の台地下を貫通する。これらのトンネルは、中央線が「御所トンネル」、首都高速が「赤坂トンネル」という名称で、それぞれ四ツ谷駅と赤坂見附方面に通じる。
「若葉」の地名は、東京都制が施行された1943年(昭和18年)4月、新たに制定されたものである。
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若葉 (新宿区) - Wikipedia)