新宿区四谷坂町は、名の通り坂が物語の背骨となっている町である。ゆるやかにうねる坂道は、歩くたびに景色を少しずつ揺らし、まるで町そのものが呼吸しているかのような錯覚を抱かせる。古い石垣や塀に触れる風は柔らかく、階段の途中で振り返れば、知らぬ間に積み重なった時間が街並みに淡い影を落としている。
この町には、日々の営みが坂という装置によって立体的に編まれている。朝は光が上から降り注ぎ、夕暮れには足元から影が伸びる。たった一本の坂道が、歩く者にささやかな劇場を贈り続けているのだ。家々の窓や並ぶ植木鉢は静かに町を見守り、角を曲がるたびに新しい表情が現れる。
四谷坂町の魅力は、都会のただ中にあるにもかかわらず、歩く速度が自然とゆるむところにある。坂を上り下りするその瞬間ごとに、世界がふと変わる。そんな細やかな変化を胸に刻みたくなり、気づけばまたこの坂を訪れたくなるのだ。
四谷坂町の場所
四谷坂町・町名の遍歴・由来
靖国通り沿いにはビルやマンションなどが並ぶが、地域内は、主に住宅地となっている。通り沿いにはビルなども見られる。
江戸時代には「坂丁」「四谷坂町」とも呼ばれた。1911年(明治44年)冠称を外し、「坂町」となる。
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四谷坂町 - Wikipedia)