四つ木公園 | 公園探訪PREMIUM

かつてこの町に、富士山がそびえたつなどと、
誰が想像しただろうか。
しかし我々は見てしまったのだ。
そう、四つ木富士――町内のパラレル霊峰。
堂々たる姿で四つ木の空を突き破り、
地元の子どもたちを日々、頂上へと誘う。

登山道は驚くほどの傾斜。
靴底に砂を噛ませながら、登る、また登る。
途中、息切れして見上げれば、
頂にはハウスが一つ。
ただの休憩所と思うなかれ。
あれは、登頂者にだけ与えられる“神の間”である。
屋根に当たる日差しがきらきらと跳ね、
下界のざわめきから切り離された静けさが支配する。

しかし人は、登るために登るのではない。
滑るために登るのだ。
滑り台は、まるで導かれるように
地上へと一直線。
風が頬を裂き、心臓が高鳴る。
誰かが言った、「登りが苦であるのは、滑りが快だからだ」と。

その近くには、あの男もいる。
日向小次郎――
キャプテン翼のあの猛者が、
この四つ木に降臨し、
常に仁王立ちで見守っている。
滑る君も、登る君も、
彼の前では皆、ただの挑戦者にすぎない。

ジャングルジムは、まるで金属の樹木。
無限に枝を伸ばす鉄の迷宮だ。
ブランコは、宙に舞い、時を往来する装置。
地上を蹴るたび、少年時代の残像が一瞬よぎる。

この公園には、遊ぶという概念だけでは
もはや説明しきれぬ何かがある。
それは儀式であり、旅であり、
現実と空想の狭間にある“遊戯の聖地”なのだ。

ようこそ、四つ木富士の懐へ。
ここに来た者は、誰しも一度、
己の心と向き合わされる。
そして滑り終えた時には、
ほんの少しだけ、
勇者に近づいているのだ。