せせらぎは街の喧騒をすり抜けてきた風が最後に腰を落ち着ける場所のように、どこまでも穏やかだ。浅い水面には陽光が細い金糸となって揺らめき、小石の間をすり抜ける水音は、聞く者の心をゆっくりと洗い流していく。
せせらぎ沿いの遊歩道を進むと、水際には小さな段差があり、そこを跳ねる水しぶきが涼しげな霧となって漂う。その瞬間、季節がひとつ軽くなるような錯覚が生まれ、足取りは自然と柔らかくなる。水草が風に合わせて揺れ、影が静かに伸びていく様子は、時間の流れまでゆっくりとした別世界への誘いのようだ。
子どもの頃に聞いた川の音を思い出す気配があり、忘れていた記憶の扉がふと開く。せせらぎは、訪れる者の心の奥に沈んだ静かな願いまで照らし出す。ベンチに腰を下ろして流れを眺めれば、日常のざわめきが遠のき、旅の途中で拾ったようなひとときの安らぎがそっと寄り添う。