公園の池は、街のざわめきのひとすみをすくい取って、静かにたゆたわせる不思議な皿のような場所だ。水面には季節の光が折り重なり、朝は銀の薄膜となって揺れ、昼は空の青を深く写し込み、夕暮れには茜色の影をそっと沈めていく。その変化はゆるやかでありながら、ひとときも同じ姿をとどめず、見つめているだけで時間の流れが穏やかにほどけていく。
岸辺に立つと、水音が微かに耳をくすぐり、水鳥の羽ばたきが静寂にリズムを刻む。通り過ぎていく風が水面をなぞり、細かな波紋が幾重にも広がって、忘れていた思考の隅々まで洗い流してくれるようだ。池のほとりには、知らない誰かが昨日座っていた気配が残り、長い歳月を経ても消えない人の温度が漂っている。
ぼんやり眺めるだけで、心がいつの間にかゆるやかになり、日常のざわつきがほどけていく。公園の池は、訪れる者を静かな旅へ引き連れる、小さな水の宇宙である。